1
Lack of Love
カメラが舞台袖からステージを覗くようなアングルでピアノに向かう坂本龍一の後ろ姿をとらえる中、静かに奏でられるのは2000年にセガのドリームキャスト用ソフト「L.O.L.」のために書き下ろされた曲。テーマが二巡目に入るとカメラはゆっくり坂本に近寄り、それにつれピアノの音量も大きくなっていく。さらに近づき坂本の背中を越え、観る者/聴く者をピアノという木と金属でできた世界へと誘う。淡々と刻まれる和音の上で、旋律が時にしっかり、時に不安に響き、一音ごとに世界はその表情をがらりと変えていく。
- Original AlbumL.O.L. (Lack Of Love)Ryuichi Sakamoto
- 1. Opening Theme
- 2. Birth
- 3. Artificial Paradise
- 4. Transformation
- 5. Mission
- 6. Dream
- 7. Unity
- 8. Crisis
- 9. Experiment
- 10. Decision
- 11. Change
- 12. Storm
- 13. Ending Theme
2
BB
『ラストエンペラー』『シェルタリング・スカイ』『リトル・ブッダ』と、3つの作品を共にした映画監督ベルナルド・ベルトルッチが2018年に亡くなり、追悼のため彼の頭文字を冠して書かれた曲で、今回初めての音源化となる。ピアノ椅子のアップからゆっくりカメラがティルトした後にカットが変わり、初めてカメラが坂本の正面をとらえる。盟友に思いを馳せる表情で厳かに、だが優しい響きがゆっくりと紡ぎ出される。時折聴こえる呼吸音が、逝ってしまった友とまだ生きている自分との対比を描き出しているようだ。
3
Andata
2017年リリースの『async』に収録された曲で、メロディラインがはっきりしているため、近年ピアノソロとしてたびたび演奏された。フロアランプのほのかな灯りの中、宗教曲を思わせる厳格な和音が続き、遠目から狙ったカメラがゆっくりと坂本にズームしていく。鍵盤を弾く手元を被写界深度浅くとらえたカットに変わると、不意に演奏を止めてしまったかと思わせるような休符にハッとさせられる。エンディングで低い音域で弾かれた和音の消え際にじっと耳を澄ませる姿に、見ている我々の解像度も上がっていく。
- Original AlbumasyncRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. andata
- 2. disintegration
- 3. solari
- 4. ZURE
- 5. walker
- 6. stakra
- 7. ubi
- 8. fullmoon
- 9. async
- 10. tri
- 11. Life, Life
- 12. honj
- 13. ff
- 14. garden
- 15. water state 2 (Vinyl only)
4
Solitude
原作・村上春樹、監督・市川準による映画『トニー滝谷』のサウンドトラックとして2005年にリリース。左手のアルペジオの上で右手が主旋律を実に精緻なタッチで奏でる中、ダンパーペダルの低い動作音が心拍のように聴こえてくる。呼び鈴のようなリフレインが響くブリッジ部分では、左手が指揮者のような動きをしたかと思うと、次の主旋律を右手と交錯しながら演奏し、リフレインとともに甘美な和音を形作る。エンディングでデクレッシェンドさせたそのリフレインの消え際を、両手ですくい取る姿は実に印象的。
- Original Albumトニー滝谷Ryuichi Sakamoto
- BUY
- 1. DNA Intro
- 2. Solitude
- 3. DNA
- 4. Bottom
- 5. Fotografia 1
- 6. Fotografia 2
- 7. Solitude short
- 8. Harmonics 1
- 9. Solitude One Note
- 10. Harmonics 2
- 11. Solitude Theme
5
for Jóhann
ポストクラシカルの旗手として、映画音楽家として、さらには映画監督としても才能が開花していたヨハン・ヨハンソン。坂本と何度かコラボレーションし、さらなる共作が期待されていたその友が、2018年に急逝したことを悼んで作られた曲。左手の和音がトップノートでメロディを暗示しつつ淡々と進行する中、右手は指揮をするような動きを続ける……あたかも不在の友へシグナルを送るかのように。気がつけば手元を照らしていたフロアランプは消え、スタジオの壁が白んでいく朝のように明るくなり始めていた。
6
Aubade 2020
2009年に三ツ矢サイダーのCMのために書き下ろされた「Aubade」に手を加え、コロナ禍の2020年4月に行われたオンラインコンサートで「Aubade 2020」と題して披露された楽曲。演奏はここまでのゆったりとしたものから一転、軽やかで流れる感じになり、背景となるスタジオの壁面が明るく照らされたことも相まって、見える/聴こえる景色が変わっていく。それはスタジオ内でのピアノの存在そのものも変質させ、木材の塊としての質感が、それまで前面に出ていた弦の金属的な質感を背景に押しやっていくようだ。
- Original AlbumPlaying the Piano 12122020Ryuichi Sakamoto
- BUY
- 1. Andata
- 2. Bibo no Aozora
- 3. Aqua
- 4. Aubade 2020
- 5. Aoneko no Torso
- 6. Mizu no Naka no Bagatelle
- 7. Before Long
- 8. Perspective
- 9. Energy Flow
- 10. The Sheltering Sky
- 11. The Last Emperor
- 12.The Seed And The Sower
- 13. Merry Christmas Mr. Lawrence
- 14. MUJI2020
- 15. Improvisation - 20201212
7
Ichimei - small happiness
監督・三池崇史、主演・市川海老蔵による映画『一命』のために2011年に書き下ろされたオーケストラ編成の曲を、今回ピアノソロ用のアレンジを施して披露。止まってしまいそうなくらいゆっくりとしたテンポの演奏で、セクション間も実にたっぷりと空けられている。まるでピアノから放たれた音が空気中に散っていく様子を、そしてそれらをマイクがとらえる様子を目視しながら次のセクションへ移行していくようだ。映画の持つ重苦しい雰囲気を踏襲するように、エンディングでは低音弦が静かに、厳かに奏でられる。
- Original AlbumOriginal Sound Track 一命
Harakiri - death of a samuraiRyuichi Sakamoto - BUY
- 1. Harakiri Opening
- 2. Pride of Samurai 武士の面目
- 3. Harakiri 切腹
- 4. No Way Out 逃げられない
- 5. What for? 何しに来た?
- 6. Small Happiness 小さな幸福
- 7. Fishing 釣り
- 8. Private Elementary School 寺小屋
- 9. Mother and Baby 母と子
- 10. God of Death 死神
- 11. Losing 喪失
- 12. Wake Up 我にかえる
- 13. Sweets 菓子
- 14. In the Courtyard 中庭にて
- 15. No Topknots 髷がない
- 16. The Red Armor 赤備え
- 17. Reminiscence 回想
- 18. Harakiri Endroll
8
Mizu no Naka no Bagatelle
1983年にサントリーオールドのCMのために書かれた曲。広い画角のカメラがゆっくりとパンをしていき、坂本とピアノを取り囲んでいるたくさんのマイク群を映し出す。近くに遠くに、実にたくさんのマイクだ。距離を取って置かれたマイクによるものと思われる空間を感じさせるピアノの音が美しく、NHK509スタジオの響きを堪能できる。ふとカットが変わり鍵盤寄りの映像になると、音像もそれに合わせて近くへと変わる。呼吸音も近くなり、この空間を御しているのは生きている人間だという事実を改めて実感する。
- Original AlbumWORKS I - CMRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. 日本生命「きみについて」
- 2. パンパース「赤ちゃんのおしり」
- 3. EXPO’85住友館「空に合おうよ」
- 4. 旺文社歴史探訪
- 5. 資生堂パーキージーン
- 6. 新潮文庫キャンペーン-Short version
- 7. 新潮文庫キャンペーン-Long version
- 8. 日本生命「夜のガスパール」
- 9. 日本生命「青ペンキの中の僕の涙」
- 10. 日立マクセル「SOFT MACHINE」
- 11. 資生堂’83
- 12. ダイエー
- 13. サントリーOLD I
- 14. サントリーOLD II
- 15. サントリーOLD
- 16. サントリー
- 17. 専売公社
- 18. NTT「ハウディ」
- 19. 味の素 Atype’60
9
Bibo no Aozora
1995年のアルバム『SMOOCHY』収録曲。初出時は坂本のボーカルがフィーチャーされていたが、その後トリオやピアノソロなどインストゥルメンタルとして披露されることが多く、コンサート定番曲の1つとなった。映画では満面の笑みをたたえて演奏していたが、即興部分に納得できなかったのか急に和音を探り始め、一通り試した後に演奏は中断する。最上の響きを追い求めるその姿は胸を打つものであり、素晴らしいパフォーマンス収録の裏にこうした光景が数多く繰り広げられていたのだろうと、思いを馳せずにいられない。
- Original AlbumSMOOCHYRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. 美貌の青空
- 2. 愛してる,愛してない
- 3. BRING THEM HOME
- 4. 青猫のトルソ
- 5. TANGO
- 6. INSENSATEZ
- 7. POESIA
- 8. 電脳戯話
- 9. HEMISPHERE
- 10. 真夏の夜の穴
- 11. RIO
- 12. A DAY IN THE PARK
10
Aqua
1998年にリリースされたアルバム『BTTB』は、“Back to the Basics”を略したタイトルの通り、自身のルーツであるピアノに改めて向き合って作曲された作品集。そこに収録されていた本作は、本人いわく「自分の楽曲としては一二を争うほどシンプルな曲」。ピアノソロのコンサートでは頻繁に演奏されてきた定番曲であるが、今回はゆったりとしたテンポにより、立ち現れる音像がかつて無いほど慈愛に満ちたものとなっている。
- Original AlbumBTTBRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. opus
- 2. sonatine
- 3. intermezzo
- 4. lorenz and watson
- 5. choral no.1
- 6. choral no.2
- 7. do bacteria sleep?
- 8. bachata
- 9. chanson
- 10. distant echo
- 11. prelude
- 12. sonata
- 13. uetax
- 14. aqua
- 15. snake eyes
- 16. tong poo
11
Tong Poo
1978年、イエロー・マジック・オーケストラのデビューアルバムに収録された初期の代表作。これまで2台のピアノのためにアレンジされたバージョンはあったが、ソロピアノ版は初披露となる。原曲の印象的なイントロを省いていきなり主旋律から入り、その主旋律も繰り返されるごとに異なるアレンジが施されていく。長い中間部、左手で繰り返し弾かれるベースパートからは確かなグルーブが感じられ、それが終わると原曲のイントロ部を静かにそして確かなタッチで表現。この曲が持つ奥深さに改めて分け入ることができる。
- Original AlbumYELLOW MAGIC
ORCHESTRAYELLOW MAGIC ORCHESTRA - BUY
- 1. コンピューター・ゲーム “サーカスのテーマ”
- 2. ファイアークラッカー
- 3. シムーン
- 4. コズミック・サーフィン
- 5. コンピューター・ゲーム“インベーダーのテーマ”
- 6. 東風
- 7. 中国女
- 8. ブリッジ・オーバー・トラブルド・ミュージック
- 9. マッド・ピエロ
- 10. アクロバット
12
The Wuthering Heights
エミリー・ブロンテの小説『嵐が丘』を1992年にピーター・コズミンスキー監督が映画化した際に書き下ろされた曲。ここまで弱音を前面に押し出していた演奏が、この曲では力強いものへと変化し、ピアノという楽器が本来持つダイナミックレンジの広さを存分に使い切っている。本人いわく「非常に力を入れて作った曲」という自信作であるためか、演奏に微塵も迷いがなく、手さばきをはじめとする所作も実にキレがある。凜とした佇まいから放たれる圧倒的なサウンドは、本作品の中で間違い無く白眉のひとつであろう。
- Original Album
Music from the Motion Picture
Emily Bronte’s“WUTHERING HEIGHTS”Ryuichi Sakamoto - BUY
- 1. Main Titles / Haunted House / Ghost
- 2. Home / Growing Up
- 3. Omen
- 4. Cathy And Edgar
- 5. Where Is Heathcliff
- 6. Christening
- 7. Betrayal
- 8. I Am Heathcliff
- 9. Grange
- 10. The Plot
- 11. The New Owner / The Last Kiss
- 12. Switching Sides
- 13. Elopement / Hallucination
- 14. Isabella The Abused
- 15. Wasted Lives
- 16. Catherine Dies
- 17. Young Catherine
- 18. Letter
- 19. Subjugation
- 20. The Marriage
- 21. Hareton And Catherine
- 22. Catherine's Return
- 23. Beckoning
- 24. Main Theme / End Titles
- 25. Main Theme (Piano Version)
13
20220302 - sarabande
生前最後のアルバム『12』収録曲。「2021年の大きな手術のあと、日記を書くようにスケッチを録音していった。そこから気に入った12曲を選びアルバムとした。何も施さず、あえて生のまま提示する僕のいまの音だ」という本人の説明からすると、2022年3月2日のスケッチか。ただ“sarabande”と副題が付されているように推敲を重ねた感も強い。茫漠とした空気がダークな様相を帯びていくサウンドスケープ。気象庁の記録によるとこの日の東京は日出6:10、晴後雨、最高気温16.3℃、最低気温7.6℃、日入17:37だった。
- Original Album12Ryuichi Sakamoto
- BUY
- 1. 20210310
- 2. 20211130
- 3. 20211201
- 4. 20220123
- 5. 20220202
- 6. 20220207
- 7. 20220214
- 8. 20220302 - sarabande
- 9. 20220302
- 10. 20220307
- 11. 20220404
- 12. 20220304
14
The Sheltering Sky
1990年、ポール・ボウルズの『極地の空』を原作にベルナルド・ベルトルッチが監督した映画『シェルタリング・スカイ』のために書き下ろされた曲。オーケストラ版の優美な世界とは異なり、ピアノソロでは要素をそぎ落とし、中低音部に重きを置いた硬質な演奏。だが、ダイナミクスを生かしたドラマチックな展開は原曲以上である。ちなみに映画にナレーターとして参加しているボウルズが、ラストで「あと何回満月を眺めるか?」と自著を朗読した台詞は、坂本が逝去した後に刊行された自伝タイトルの元となった。
- Original Album
MUSIC FROM THE ORIGINAL
MOTION PICTURE SOUNDTRACK“THE SHELTERING SKY”Ryuichi Sakamoto
- 1. THE SACRED KORAN
- 2. THE SHELTERING SKY THEME
- 3. BELLY
- 4. PORT'S COMPOSITION
- 5. ON THE BED (DREAM)
- 6. LONELINESS
- 7. ON THE HILL
- 8. KYOTO
- 9. CEMETERY
- 10. DYING
- 11. MARKET
- 12. GRAND HOTEL
- 13. THE SHELTERING SKY THEME (PIANO VERSION)
- 14. JE CHANTE
- 15. MIDNIGHT SUN
- 16. FEVER RIDE
- 17. CHANT AVEC CITHARE
- 18. MARNIA'S TENT
- 19. GOULOU LIMMA
- 20. HAPPY BUS RIDE
- 21. NIGHT TRAIN
15
20180219 (w/prepared piano)
プリペアードピアノとは、ピアノの弦に異物を置いたり挟んだりすることで本来のピアノとは違った音を出す手法のこと。演奏者が偶発的な響きを楽しみ、それに呼応した演奏をするために行われることが多いが、この曲での坂本は自身が欲する響きとなるよう、クリップを挟む位置を細かく調整し、鍵盤を弾いては生じる倍音を確かめていく。演奏が始まると、チェンバロのようなダルシマーのような不思議な倍音が鳴り響き、その背後からピアノ本来の音も密やかに立ち上がってくる。移ろいゆくそのバランスの何と美しいこと。
16
The Last Emperor
坂本龍一が初めてベルナルド・ベルトルッチ監督と組んだ1987年公開の映画『ラストエンペラー』は、その年のアカデミー賞各部門で高く評価され、坂本も作曲賞を受賞している。印象的なこのメインテーマは早い時期からピアノ曲としてのアレンジが施され、持続音系の管弦楽器とは異なる、減衰音系のピアノならではのアタックの強さと余韻を生かした独奏曲として見事に再構築されている。坂本以外の多くのピアニストにより演奏されているが、本人によるスタジオの空気を震わせるような力強い演奏はやはり別格だ。
- Original Album
Original Motion Picture Soundtrack“THE LAST EMPEROR”Ryuichi Sakamoto, David Byrne,
Cong Su - BUY
- 1. First Coronation
- 2. Open the Door
- 3. Where Is Armo?
- 4. Picking Up Brides
- 5. The Last Emperor - Theme Variation 1
- 6. Rain (I Want a Divorce)
- 7. The Baby (Was Born Dead)
- 8. The Last Emperor - Theme Variation 2
- 9. The Last Emperor - Theme
- 10. Main Title Theme (The Last Emperor)
- 11. Picking a Bride
- 12. Bed
- 13. Wind, Rain and Water
- 14. Paper Emperor
- 15. Lunch
- 16. Red Guard
- 17. The Emperor's Waltz
- 18. The Red Guard Dance
17
Trioon
アルヴァ・ノトことカールステン・ニコライと坂本は頻繁にコラボレーションを行い、ピアノと電子音による美しいサウンドスケープを多く生み出してきた。この曲は2002年のアルバム『Vrioon』に収録されたもの。ピアノを弾く坂本を真横から真っ直ぐにとらえたカメラアングルは、二人によるライブステージを思い起こさせる。フロアランプによる丸い灯りも、まるでカールステンがLEDパネルに映し出すグラフィックのようだ。ピアノの余韻の中にカールステンによる電子音と微細なリズムが聴こえてくるのは幻聴だろうか。
- Original AlbumvrioonAlva Noto + Ryuichi Sakamoto
- 1. UOON I
- 2. UOON II
- 3. DUOON
- 4. NOON
- 5. TRIOON I
- 6. TRIOON II
- 7. LANDSCAPE SKIZZE
18
Happy End
1981年にリリースされたYMOの3枚目のフルアルバム『BGM』に収録されている楽曲だが、もともとは坂本ソロ名義のシングル『Front Line』のカップリング用に制作された曲。『BGM』でのバージョンはダブ処理が施されメロディ感が希薄になっていたが、今回のピアノソロ版はもともとのシンプルなメロディラインを生かした演奏で、時折そのメロディにハーモニクスのような高音がそっと足されるさまが実に美しい。中間部、フリーな演奏が展開されそうになるが、踏みとどまってクラシカルにまとめていく様子はスリリング。
- Original AlbumFront LineRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. Front Line
- 2. Happy End
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Merry Christmas Mr. Lawrence
1983年、大島渚監督作品『戦場のメリークリスマス』のために書き下ろされた、坂本にとって初の映画音楽であり、その後の音楽活動の大きな礎となった作品。冒頭、12/8拍子でつづられるフレーズの中、和音がアルペジオで優しく奏でられ、ひと呼吸置いてから4/4拍子で訥々と奏でられる主旋律の魅力は今なお色褪せない。あまりに遅いテンポで衝撃を与えた2020年の演奏を今回も踏襲し、原曲ではオーケストラを模したProphet-5による展開部を、ピアノならではの力強さで弾き切り、一気にクライマックスへと到達する。
- Original AlbumMerry Christmas Mr. LawrenceRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. Merry Christmas Mr. Lawrence
- 2. Batavia
- 3. Germination
- 4. A Hearty Breakfast
- 5. Before the War
- 6. The Seed And The Sower
- 7. A Brief Encounter
- 8. Ride Ride Ride (Celliers' Brother's Song)
- 9. The Fight
- 10. Father Christmas
- 11. Dismissed!
- 12. Assembly
- 13. Beyond Reason
- 14. Sowing The Seed
- 15. 23rd Psalm
- 16. Last Regrets
- 17. Ride Ride Ride (reprise)
- 18. The Seed
- 19. Forbidden Colours
20
Opus - ending
「Aqua」と同じく1998年リリースのピアノ曲集『BTTB』に収録されたこの曲が、クレジットとともにコンサートのコーダのように奏でられていく。明るく照らされた509スタジオをカメラが引きの映像でとらえると、林立したマイクスタンドがまるで医療器具のように見える。坂本という存在を余さずキャプチャーするために用意された器具。不意にカットが変わると、そこに坂本の姿はなく、ピアノが自動演奏で曲の続きを奏でている。坂本が消えた後もその音楽を生かし続けるように、記録された坂本のタッチで……。
- Original AlbumBTTBRyuichi Sakamoto
- BUY
- 1. opus
- 2. sonatine
- 3. intermezzo
- 4. lorenz and watson
- 5. choral no.1
- 6. choral no.2
- 7. do bacteria sleep?
- 8. bachata
- 9. chanson
- 10. distant echo
- 11. prelude
- 12. sonata
- 13. uetax
- 14. aqua
- 15. snake eyes
- 16. tong poo
MUSIC COMMENTARY
文:國崎晋(RITTOR BASE ディレクター)
文:國崎晋(RITTOR BASE ディレクター)